■ベッコウトンボの保護
桶ケ谷沼ビジターセンター所長 内野茂喜(うちのしげき)
ベッコウトンボは、ごく近い将来に野生での絶滅の危険性が極めて高いとされる絶滅危惧IA類に指定されています。
ベッコウトンボは、桶ケ谷沼のようにアシやマコモなどの抽水植物が繁茂し、水面がまばらに見え、周囲に草原のある池沼(ちしょう)に生息します。かつては、日本の29都府県で確認されましたが、近年このような池沼が少なくなり、また、環境の変化やアメリカザリガニなどの天敵の影響で個体数も生息地も激減しています。現在の生息地は鹿児島県、大分県、福岡県、山口県、そして静岡県の5県の一部の地域のみで、静岡県では桶ケ谷沼だけです。
桶ケ谷沼では、ベッコウトンボを守るため、いろいろな団体が活動をしています。「野路会(のみちのかい)」は毎年4月中旬に行われる「ベッコウトンボ調査会」の企画運営をしています。「岩井里山の会」は沼の北に復元池(通称:生(い)け簀(す))を設置し保護活動をしています。「桶ヶ谷沼を考える会」は沼の南西部の台地(通称:甑塚(こしきづか)の水辺)に天敵や他のトンボの影響を受けないように網を掛けた60基以上のコンテナを置き保護活動をしています。ここではボランティアの力を借りて、ベッコウトンボの産卵誘致、ヤゴの選別、ヤゴへの定期的な餌やり、猛暑対策などを行っています。
ベッコウトンボを絶滅の危機から救い、かつてのように沼全体に飛ぶ、そんな桶ケ谷沼を再現できるよう、これからも保護活動を進めていきます。皆さんもどうぞ力を貸してください。
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