■大人もRSウイルス感染症に注意しましょう
副病院長 呼吸器内科
妹川史朗(いもかわしろう)
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus(レスピラトリー シンサイシャル ウイルス):RSV)感染症はRSVが引き起こす呼吸器感染症で、主に冬期(9月頃〜翌年2月頃まで)に流行が認められます。2歳までにぼぼ100%が感染し、初めて感染した場合には約3割程度が気管支炎や肺炎を起こします。そして生涯に渡り何度も感染と発症を繰り返し、成人においても重要な呼吸器感染症の原因として認識されるようになってきました。65歳以上の呼吸器感染症の約10%がRSVによるものと推定されています。
RSVは咳(せき)やくしゃみの飛沫(ひまつ)や、それらに触れた手の接触により鼻粘膜に感染し、4〜5日の潜伏期間の後、鼻汁や咳などの症状が出現します。健康な成人では軽症の場合が多く、数日で回復することがほとんどです。しかし、高齢者では感染性分泌物を吸引すると気管支炎や肺炎を起こしやすく、特に心臓や肺に基礎疾患を持つ方では現病の悪化、重症化や死亡のリスクが高いことが知られています。
現在はRSVに対する有効な治療薬はなく、対処療法となるため予防が大切です。手洗い、マスクの着用などが基本ですが、近年60歳以上の方、または50歳以上で肺、心臓、腎臓、肝臓、神経系などに基礎疾患がある方、糖尿病や肥満の方などにはワクチンの接種が可能になりました。
RSVワクチンを1回接種した場合、1シーズンでの予防効果は80%以上と高い効果が期待できます。何らかの基礎疾患を患って通院治療を受けている方は、RSVワクチンの接種について担当医に相談してみてはいかがでしょうか。