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人権コラム vol.90

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静岡県磐田市

■言葉は無くとも
ふれあい交流センター センター長
袴田恭紹(はかまたやすつぐ)

交流センターには、多くの老若男女が訪れます。主体的に参加する方々の集まりは、明るく活気にあふれているので、活動を見る度にエネルギーを頂いています。先日、子どもたちの活動から、はっと気づかされることがありました。

料理教室に参加した子どもたちが、お好み焼きの生地作りをしていた時のことです。小学校2年生の男の子同士が、生卵を割ろうとしていました。薄い殻にひびを入れ、中身を出すという作業は、慣れていないと難しい作業です。加減をしながら殻にひびを入れ、ボールの中に卵を入れたのですが、割れた殻が一緒に入ってしまいました。その子は、表情一つ変えることなく、さい箸を使って殻を取り出そうとしていました。隣にいた子は、その作業をじっと見つめていました。取り出すのに手間取りましたが、やっと殻を取り出した瞬間、先ほどまで真顔であった2人の顔が、ぱっと笑顔に変わりました。言葉を交わすことはありませんでしたが、目と目を合わせていました。言葉を使わなくても、意思疎通をしている姿に、心が洗われたような清々しさを感じました。

同じような状況で考えてみます。殻が入ってしまったことを嘆いているところに、「やっちまったなあ」と横からあえてツッコミを入れ、その場の雰囲気を明るいものにするのも、相手のことを考えた言動です。そして、この子たちのように、うまくいかなかった時、それを修正しようとしているのを黙って見守るのも相手のことを考えた行動です。見て見ぬふりをするのではなく、視線を合わせ、心を合わせることができる力を身につけている低学年の子に驚き、頼もしく思いました。

SNSでの誹謗中傷、障がい者差別、LGBTQなど、さまざまな人権問題が起きています。これらを解決していくことが最優先ですが、そもそも問題が起きないようにしていきたいものです。相手を尊重する気持ちがあれば、問題も起きないのではないでしょうか。2人の子どもから、相手を尊重する姿勢は、老若男女に関係なく大切であり、できるということを再認識しました。

       

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