■ギタリスト・養蜂家 服部潤(はっとりじゅん)さん
1990年生まれ。磐田市出身。2015年から約10年間、映画や人気アニメなどの主題歌も手がけたロックバンド「Thinking Dogs」のギタリストとして活動。音楽活動と並行し2020年にハニージェイプロジェクト株式会社の創立に参画し、同年よりシモキタ園藝部(えんげいぶ)の養蜂チーム創設に携わる。現在は養蜂にも取り組む。
◇ロックバンドの活動を振り返って
あの頃は夢のような毎日でした。その中でも特に印象深いのは、やはり「音の力」です。生まれも育ちも異なる人たちが、音楽を通じて一瞬で繋がり、ステージを囲み、心が触れ合う。技術や競争を超えたところにある「心の温度」を知った10年間でした。
◇養蜂家を始めた理由
幼い頃からの「もう1つの夢」は養蜂でした。幼少期に近所の方にミツバチの飼育を教わったのが原点です。上京して間もない頃、ビルの屋上から街を見渡していた際「地上には制限があるが、空にはまだ自由があるのではないか?」とひらめきを得ました。これを機に、都市で養蜂を行う「都市養蜂」に挑戦したいと考えるようになりました。
◇シモキタ園藝部の活動について
下北沢でハチミツを採る活動は、最初誰も本気にせず、「無謀だ」といわれることもありました。しかし、熱意ある仲間との出会いで、自然との共生を実現しました。都市の緑を大切にするシモキタ園藝部は、養蜂との親和性が高いと感じています。私はミツバチとの二人三脚で、空から街の花々へ花粉を運ぶ「空の担当」を務めています。今ではミツバチが暮らしに溶け込み、草花に囲まれて自然と笑顔が生まれる光景が下北沢に広がっています。2023年には、シモキタ園藝部の取り組みが「緑の都市賞(内閣総理大臣賞)」を受賞し、そのプロジェクトの一部に関われたことをとても光栄に思います。
◇ふるさと磐田市への思い
静かな風、祭りの音、夕暮れの匂い。磐田での記憶は、今でも私の原点です。都会では時の流れが早く、いつの間にか自分を見失うことがあります。そんな時こそ「緩やかな時間」が必要だと感じます。ふるさとでゆったり過ごせば、自分の「好き」がまた見えてきます。シンプルだからこそ得られる温かさが、このまちには流れています。
◇今後の目標
バンド活動には一区切りをつけましたが、音楽活動を今も続けつつ、養蜂という全く異なる世界で活動しています。夢は1つではなく、1度きりでもありません。形は変わっても、心の熱が冷めなければ、それが夢につながります。これからも常識や肩書きにとらわれず、ミツバチと関わりながら、「自分の1日」を丁寧に生きたいです。

