■虫垂炎(ちゅうすいえん)について
消化器外科 科長
鈴木克徳(すずきかつのり)
虫垂は小腸と大腸のつなぎ目にある盲腸から突出するように存在しています。この虫垂におこった炎症を虫垂炎といい、俗に「もうちょう」と呼ばれています。
場所はお腹の右下にありますが、痛みがみぞおちから始まることもあります。「胃が痛いなーと思っていたら、だんだん痛みが右下に移動してきた」といった症状が典型的といわれています。
以前は虫垂炎と診断された方のほとんどに緊急手術が行われていました。予定された手術では、手術前に必要な検査を行い、腸の中をきれいにして、安全に手術ができるように患者さんも我々医療者も準備を行いますが、緊急手術はその名の通り、緊急で手術を行います。学生であれば、学校に着いた途端に「今日はテストです」と言われるようなものです。皆さんもできればしっかり準備をしてから手術に臨みたいですよね。
最近は抗菌薬(細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬)の研究・開発のおかげで緊急手術を行わなくても炎症を抑える(薬で散らす)ことができるようになり、抗菌薬による治療が第一選択となっています。
しかし、病院に来られたときに既に腹膜炎(おなかの中に便や細菌が漏れ出てしまう)状態や、抗菌薬の治療に反応しない方には、今でも緊急手術が行われています。また、抗菌薬の治療により軽快した後も、再発する(またおなかが痛くなる)可能性があります。
そのため炎症が治まったころに、虫垂切除を行うことをお勧めしています。その場合には、成人の虫垂炎の原因の一つに大腸の腫瘍の可能性があるため、大腸内視鏡検査も併せてお勧めしています。