■植物だって病気になる~植物を痛めつける微生物とは?~
静岡県農林環境専門職大学 教授
外側正之(とがわまさゆき)
人や動物と同様、植物も病気にかかります。農家の方はもちろん園芸愛好家の方々は良くご存じですよね。
植物に被害を及ぼすものには、物理的(水や温度など)・化学的(肥料や植物ホルモンなど)要因による「非生物」的なものと、害獣・雑草・害虫・微生物(病原体)による「生物」的なものがあります。
雑草や害虫は目に見えるので分かりやすいのですが、なかなか理解してもらえないのが病原体(真菌・細菌のみを指す場合は「病原菌」、それに原生生物・ウイルスを加えた場合は「病原体」と呼びます)、いわゆる植物に病原性を有する微生物のことです。人畜の微生物病の原因が「細菌」であることが多いのに対し、植物では「真菌」特にその中でも糸状菌(いわゆるカビ)によるものが圧倒的に多いのが特徴です。
40代以上の方でしたら、1993年(平成5年)に起きた平成の米騒動は記憶にあるかと思います。冷夏によって米が大減収となり、東南アジアから輸入されたインディカ米(日本のジャポニカ米と異なり、細長く粘り気が無い。ピラフに合う)を食べた経験があるかと思います。冷夏により、カビの1種による「イネいもち病」が激発し、減収に繋がったのです。この病気は日本の主食の最重要病害ですので、明治時代から非常に詳しく研究されてきた植物病であり、防除技術もそれに伴って発展してきたため、現代の技術を持ってしてもこれだけの被害が出るとは!と関係者は驚きを隠せませんでした。古くはアイルランドで発生したジャガイモ疫病による大飢饉をはじめとして、農作物の栽培は常に植物に病気を起こす微生物(病原体)との戦いでもあります。
病原体との戦いは、植物の世界でも、これからも、ずっとずっと続いていくのです。