■お酒を飲まなくても注意が必要 脂肪肝(しぼうかん)
肝臓内科部長
肝臓疾患センター長
健診センター長
笹田雄三(ささだゆうぞう)
脂肪肝は、肝臓の病気の中で最も多い疾患です。脂肪肝は、肝細胞に脂肪滴(しぼうてき)が蓄積した病態で、肥満の方に高い頻度でみられます。健診で腹部エコー(超音波)検査を受けた方の30%程度に脂肪肝がみられます。
脂肪肝を指摘された場合、アルコールを飲む方はもちろんですが、飲まない方も注意が必要です。
アルコールを飲まない方の脂肪肝は非アルコール性脂肪性肝疾患と呼ばれています。非アルコール性脂肪性肝疾患は男性に多くみられますが、女性は加齢と共に増加する傾向にあります。非アルコール性脂肪性肝疾患に炎症が加わると非アルコール性脂肪肝炎になり、肝硬変に移行していきます。肝硬変(かんこうへん)とは、肝臓が線維組織で硬くなった状態で、肝臓の機能が低下し、進行すると黄疸(おうだん)や腹水(ふくすい)がみられるようになります。また、肝臓がんが発生する可能性が高くなります。
治療の基本は、食事療法、運動療法による体重減量です。
食事は摂取カロリーを制限して、動物性脂肪・炭水化物の摂り過ぎに注意しましょう。また、運動療法に関しては、有酸素運動、レジスタンス運動(筋肉運動)がともに有効とされています。筋肉をつけることで基礎代謝が上昇し、やせやすくなります。筋肉運動をしてから、有酸素運動を行うと脂肪燃焼効果が向上します。
非アルコール性脂肪性肝疾患は、糖尿病や高脂血症などの代謝異常がある方に多くみられ、そちらの治療を行うことも重要です。
「私は、お酒を飲まないから大丈夫」と油断していると、いつの間にか、病状が進行していることもあります。そうなる前に生活習慣を見直して、健康な体づくりを目指しましょう。