■慢性便秘症について
第一医療部副部長 兼 消化器内科部長 兼 消化器内視鏡室室長
西野眞史(にしのまさふみ)
便秘症は日常的によくみられる症状の一つで、疾患(しっかん)というより体質的な問題と考えられることも多く、その診療は軽視される傾向にありました。しかし、慢性便秘症は生活の質を大きく障害していることから、その診療の重要性が認識され、ガイドラインが示されるようになりました。最新の「便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症」では、フローチャートを使用して診断から治療までが系統立てて診療が進められるように整備されています。
便秘症には、さまざまな治療薬により引き起こされる薬剤性便秘や、大腸がんや糖尿病などの疾患により引き起こされる二次性便秘などもあります。また、排便習慣の急激な変化、便に血液が混ざる、6カ月以内の予期せぬ3kg以上の体重減少、発熱、関節痛、異常な身体所見(しょけん) (腹部にしこりが触れる、直腸指診でしこりが触れたり血液が付着するなど)といった症状は、慢性便秘症の警告症状・兆候(ちょうこう)とされ、大腸がんなどの病変(びょうへん)の存在が疑われるため大腸内視鏡検査が推奨(すいしょう)されます。
治療については、規則正しい食生活や食物繊維の摂取、水分摂取、運動などの効能が示されていますが、限定的であり、食事・生活習慣を整えても改善されない場合は薬物治療の適応となります。また、2012年頃から新たな作用機序(さようきじょ)の便秘治療薬が使用できるようになり、治療の幅も増えて良好な便通コントロールが得やすくなっています。
便秘で困っている方は、体質だから仕方ないと片付けずに、お近くの内科または消化器内科へぜひご相談してみてください。