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■認知症について
第一医療部副部長 兼 脳神経内科部長 兼 認知症疾患医療センター長
藤本正也(ふじもとまさや)
人には、動物には無い高い知能があります。この知能が低下してしまう病気が認知症です。
認知症にはいろいろ種類があり、その代表格がアルツハイマー型老年認知症です。アルツハイマーの方の脳を調べると、老人斑(ろうじんはん)といって小さな染みのようなものがたくさんできています。この成分はアミロイドβ(ベータ)という水に全然溶けないヤニのようなもので、この有毒な老廃物が脳に溜まり続けることで脳の神経細胞が死滅し、認知症が進行していくといわれています。そこで、アミロイドβを消す薬の開発が続けられ、最近になりレカネマブという薬が使えるようになったとのニュースがありました。
ただこの薬は、ごく早期の軽症の人で、検査でアミロイドβが脳に溜まっている人でないと使えません。ですから薬で認知症を治せるようになるのは、まだこれからでしょう。
しかし、そもそもアミロイドβが制圧されたとしても、認知症がなくなるのか、個人的には疑問を持っています。人は、歳をとれば記憶力は落ちる定めであり、リタイヤ後も頭と身体を使い続ける事で衰えを防ぐのが最も効果的な認知症予防だと信じているからです。