■無痛分娩(むつうぶんべん)ってどんなお産?
産婦人科医長 小田木 秋人(おだぎ あきと)
皆さんは分娩に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。お腹の中の赤ちゃんにいよいよ会えるというポジティブなイメージがある一方で、「怖い」「不安」「痛い」といったネガティブなイメージもあると思います。そんな分娩の「痛い」を和らげる方法として、無痛分娩があることをご存じでしょうか。
無痛分娩とは陣痛の痛みを麻酔を使って和らげるお産の方法です。麻酔にはいくつかの種類がありますが、硬膜外麻酔が多く用いられます。硬膜外麻酔とは背中の奥に細い管を入れて麻酔薬を注入することで痛みを和らげる方法です。
無痛分娩の一番のメリットはお産の痛みが軽くなることですが、「疲労が少なかった」、「産後の回復が早かった」という感想もよく聞かれます。また、心臓や肺の調子が悪い妊婦さんや血圧が高めの妊婦さんなど、合併症をお持ちの妊婦さんに推奨される場合もあります。
無痛分娩がお産に与える影響として、赤ちゃんが産まれるまでの陣痛が長い傾向にあり、産まれる際には吸引や鉗子(かんし)などの器械を使う頻度が高くなります。また、子宮収縮薬(陣痛を促す薬)を使う頻度が高くなります。稀(まれ)ですが、麻酔による副作用が起こることがあるため、慎重な観察や、有事に備えた適切な準備をして行う必要があります。
日本における無痛分娩の割合は欧米諸国と比較すると低い状況です。しかし、2018年には分娩全体に対して無痛分娩は5.2%でしたが、2023年には11.6%と上昇傾向です。当院でも合併症のない経産婦を対象に無痛分娩を行っています。
妊婦さんやご家族の皆さんは、担当医と相談し、各施設の体制をよく理解した上で分娩の方法を選んでいただければと思います。