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人権コラム vol.89

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静岡県磐田市

■綺麗な花に囲まれて!
ふれあい交流センター センター長
袴田 恭紹(はかまた やすつぐ)

ある研修会でのことです。彼のお話は、心の中にすっと入り込んできました。
「きれいな花でしょう。ここにいるのが私で、隣にいるのは妹です。」鮮やかな色どりの花に囲まれて座っている兄妹の写真は、見る人に心地よさを与えていました。彼は、日本とブラジルを行ったり来たりすることで、言語の獲得・文化の理解に、かなりの苦労をしたことを伝えていました。「この写真は、日本にいる時に撮ったのですが、自分の家ではないんです。隣の家に咲いている綺麗な花の前で撮っているのです。日本では、他人の敷地に入ることは、だめですよね。でも、ブラジルでは大丈夫なんです。もちろんこの後、注意されましたが、その時は、なぜいけないのかがよく分からなかったんです・・・」
彼が伝えたいことは、日本とブラジルにおける文化の違いではありません。自分と同じように「なぜいけないのか」が分からずにいる子が、あなたの近くにいませんか?という問いかけであるように感じました。「郷に入れば、郷に従え」という言葉があるように、異文化に溶け込んでいくことが大切であることは言うまでもありません。しかし、「なぜ、よその敷地に入ったの」の一言があると、違う物語になっていた可能性があります。例えば「花が、すごく綺麗だったから」という答えが返ってきたかもしれません。「綺麗でも入っちゃだめだよ」と注意するか、「そうだったんだね」と理解を示すかは、時と場合と人によって変わると思いますが、双方向のやりとりがあることで、人と人とのつながりが生まれます。
一方的な価値観の押しつけから生まれるものは、悲しさや悔しさ、時には憎しみです。現在起こっている人権問題は、価値観の相違によって生まれ、意思疎通の無さによって拡大しているように見えます。相対する価値観があった時に、どちらが良いかを比べてしまいがちですが、理解しようとすることは難しいでしょうか。冒頭の彼の話は、人を理解しようとする気持ちが溢れており、自分自身は、どうであろうかと振り返ることのできるお話でした。

       

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