■子どもの健康と学校保健
静岡産業大学 スポーツ科学部教授
和田雅史(わだまさふみ)
近年、子どもの視力低下が著しく進んでおり、文部科学省からは、平日の1時間半程度、屋外で過ごす子どもの方が、室内で過ごす時間が多い子どもに比べて、視力の低下が起こりにくいという報告がされています。
屋外で遊んだりスポーツをすることによって、常に近くから遠くのものに焦点を合わす眼の訓練が自然とされるからと考えられます。いつも室内でゲームなどをする子どもは、近くのものばかりに焦点を合わせることで、中間から遠くを見る遠見視力が低下すると考えられています。また、子どもの視力の発達は5歳前後で完成するといわれており、幼少期から近くのものばかりを見て育った子どもたちの中には、近くのものを見る近見視力が弱まわっているという報告が増えています。
中高の校長先生に「今、子どもたちの生活で一番の課題は何ですか」と質問すると、異口同音に「スマホでのゲーム依存症です」と答えが返ってきます。夜遅くまでゲームに没頭し、大脳が興奮状態になり、寝られないのです。結果として朝起きられず、遅刻や欠席も増え、学習意欲の低下と学習成績の低下に繋がっているといわれています。WHOもゲーム依存症を新たな病気と位置づけて警鐘を鳴らしています。
また、コロナによる影響も大きいことが窺(うかが)えます。屋外での活動量が急激に低下し、屋内での活動量が多くなると肥満傾向や体力低下も起こります。新型コロナウイルス流行後も、子どもたちの体力や運動能力をいかに向上させるかは、発育発達の保障という観点からも重要な課題であります。
子どもの健康については、新たな課題が次から次へと生まれてきます。その多くは、生活様式や社会環境の変化によるものが多く、子どもを取り巻く家庭や学校、地域コミュニティが子どもの健康を守り育てる意識とそれを実現するための健康施策を行う時期に来ているのではないでしょうか。