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■乳がん予防に役立つ生活習慣
乳腺外科部長 伊藤靖(いとうやすし)
診療の統計は、歴史資料と同じように過去に生じたことの正確な記録を分析して未来を予測し、良い未来にするために行動する上で重要です。
統計から乳がんの発症に影響するリスク因子は、(1)肥満、(2)受動喫煙を含む喫煙、(3)飲酒が挙げられます。予防に役立つ可能性がある因子は、(1)運動、(2)授乳、(3)適度な大豆摂取です。増殖する生物は、自身と同じ形や性質を未来に受け継いでいくために、設計図である遺伝子を複製しています。しかし、環境の変化などに反応して一部が変化する場合があります。がんは、その遺伝子の変化により、本来の役割を果たさずに他の細胞を破壊して増殖する異常細胞と考えられます。乳がんも遺伝子の変化により生じた異常細胞によるもので現在その数は増え続けています。
この乳がんを予防するためには、リスク因子と予防因子を意識した生活習慣を心がけ、子どもたちにも予防の大切さを伝えていくことが重要です。入浴の時などに乳房をよく見て、触って、変わりがないか注意しましょう。40歳になったら、乳がん死亡率減少効果が証明されている「マンモグラフィ検診」を少なくとも2年に1回受けることは、良い未来につながる可能性が高い行動です。