■活力ある暮らしを支える医学
リハビリテーション科医長 有本 直人(ありもと なおと)
リハビリテーションはリハビリ、リハと呼ばれることがよくありますが、何を目指している診療科でしょうか。筋力を上げるなどの訓練がリハビリテーションの本分と思われる方が多いと思いますが、「その人がその人らしく活力ある暮らしを送ることを支える」ことがリハビリテーション医学の基本です。
筋力増強訓練などの機能向上もその人らしい暮らしを守るために必要なひとつの方法に過ぎません。このことは、疾患(しっかん)、障害、治療の段階に関わらず重要視している大事な考え方ですので、当院でもさまざまな患者さんに対して、さまざまなスタッフと連携を取りながらチームとしてリハビリテーションに取り組んでおります。
一つの例として、嚥下(えんげ)障害と言われる飲み込みがうまく出来なくなってきたことで肺炎になり、入院となったケースを考えてみましょう。
まず急性期病院である当院としては、生命を守る使命がありますので、抗菌剤の投与や食事中止といった治療が行われることがあります。食事中止となりますと、栄養不足による筋力低下の影響は退院後の暮らしに大きく関与してきますので、出来る限り早い食事再開が望まれます。食事再開が安全かどうかの判断が難しい場合には、食事摂取のリハビリテーション専門チームが飲み込み具合を検査し、評価をします。その評価の上で、どう食べるのかを考えていきます。その選択肢は無限だと思います。
まずはどのように食べて暮らしたいのか、どのような人生を送りたいのか、そのお気持ち、価値観を常日頃から家族ともお話いただき、医療スタッフにも気兼ねなくお話し下さい。その上で、生命を守りながら尊厳をも守れる方法を一緒に模索しましょう。