■傷跡(瘢痕(はんこん))について
形成外科部長 松下 友樹(まつした ともき)
「2週間以内に治った傷はきれいに治ることが多い」というのが昔の知見です。言い換えると、「比較的浅い傷は早く治るため、きれいに治りやすい」ということです。最近では研究が進み、「皮膚深層に位置する真皮(しんぴ)の網状層(もうじょうそう)の損傷が少なければ、きれいに治りやすい」ということが分かってきています。
傷跡のことを瘢痕といい、硬く、隆起し、色調の強い瘢痕のことをケロイド・肥厚性(ひこうせい)瘢痕といいます。これらの本態は、傷の修復過程でのさまざまな要因による局所の炎症および過剰なコラーゲン産生(さんせい)であると分かっています。その要因として、傷の深さ以外に、外力、ホルモン、高血圧、感染など、さまざまなものが挙げられます。「その傷が将来きれいになるか」という問いにお答えするには、これらの複合的な要因を念頭においた上での予測が必要になります。ケロイド・肥厚性瘢痕だと分かった場合、もしくはそのリスクが高いと分かっている場合は、なるべく早期から対応する必要があります。
形成外科では、縫合(ほうごう)の工夫、放射線治療、内服治療、ステロイド剤の注射やテープ、外的な圧迫など、さまざまな治療法を組み合わせて、科学的・論理的に傷跡の改善を目指しています。これまでの常識では「治療は難しい」、「体質だから諦めなさい」とされてきた傷跡の悩みについて、形成外科では改善できる可能性があります。もしお悩みの患者様がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。