■「がん」のつらい症状を和らげる放射線治療
放射線治療科部長兼放射線治療センター長
大嶋 佐知子(おおしま さちこ)
日本人の2人に1人が一生のうちに何らかの「がん」にかかるといわれています。「がん」は誰にとっても身近な病気と言えるでしょう。
放射線治療は、「がん」を治すための治療法ですが、同時に「がん」によって引き起こされるつらい症状を和らげる目的でも良く行われます。最も代表的なのは骨転移(こつてんい)の痛みに対する治療です。「がん」が骨に転移すると、しばしばひどい痛みに悩まされます。放射線治療はこの痛みに有効で、6〜9割の方で痛みを和らげることができます。
血痰(けったん)や下血などの出血も「がん」による困った症状の一つです。出血のもとになっている「がん」に放射線を当てると、高い確率で出血を止める効果が期待できます。
また今起きている症状だけでなく、いったん起きると生活に大きく影響してしまうような症状を予防する目的でも放射線が使われます。「がん」によってもろくなった骨が折れたり、大事な神経を傷めて麻痺(まひ)を起こしたりすると、食事やトイレにも不自由することになりかねません。放射線治療でこういった状況を避けられる可能性があります。ただ、このような症状は起きてしまってからでは効果がかなり低下しますので、タイミングよく治療を行うことがとても重要です。症状の変化に気づいたら、すぐに主治医へご相談ください。
症状を和らげる目的の放射線治療は、普段通りの生活を続けていくための治療です。副作用をなるべく起こさないことや少ない回数で通院の負担を減らすことなどを重視して行っています。