■におい、感じていますか?~嗅覚障害と副鼻腔炎のお話~
耳鼻咽喉科 部長
大嶋 吾郎(おおしまごろう)
温かい部屋で食べるミカンがおいしい季節になりました。オレンジ色の皮をむき始めると柑橘類特有の甘酸っぱい良い香りに包まれ、幸せなひと時を過ごせます。
ミカンなどの空気中の匂いの物質は鼻の穴から鼻内に入り、鼻腔(びくう)内の脳に近い嗅上皮(きゅうじょうひ)と呼ばれる粘膜でにおいの神経を刺激します。花粉症などで鼻汁が多く出たり鼻の粘膜が腫れてしまうと、匂い物質が嗅上皮まで届かず、しっかりと匂いを感じることができません(嗅覚障害)。新型コロナウィルス感染症でも嗅覚障害が報告されていますが、かぜをひいた時の急な炎症や慢性副鼻腔炎による慢性的な炎症により嗅上皮が壊れても、うまく匂いを感じることができなくなってしまいます。
副鼻腔炎を起こす副鼻腔とは鼻腔の周りの骨の中の空間であり、鼻腔とつながっていて、左右それぞれ4つに分かれています。副鼻腔炎には急激に激しい症状が出やすい急性炎症と、数カ月にわたって症状が続きやすい慢性炎症があり、原因も、喘息などに併発しやすく難治性の好酸球性副鼻腔炎、カビが原因の副鼻腔真菌症、歯や歯根嚢胞(のうほう)などが原因の歯性上顎洞(じょうがくどう)炎など多岐にわたります。発熱、頭痛・頭重感、頬部の痛みや鼻汁・後鼻漏(鼻汁がのどに垂れ込む)、鼻づまりや嗅覚障害など、発症部位や炎症の程度によってもさまざまな症状が出ます。治療は内服や点滴治療、難治性の場合は手術での治療も行われます。
においのトラブルでお困りの場合は何週間もそのままにせず、お近くの耳鼻咽喉科にまずはご相談されるのが良いでしょう。