■ロボット支援下手術について
呼吸器外科 科長
山下貴司(やましたたかし)
近年の医療の進歩はめざましく、外科手術領域でも、昔は大きかった傷がどんどん縮小されてきました。現在の内視鏡(ないしきょう)下か手術では、棒状の手術器具を小さな傷から治療対象の臓器へ到達させ、低侵襲(ていしんしゅう)でがんなどの病変の切除術を行うことができます。そんな折、手術支援ロボットの登場がさらなる革新を起こしました。
手術支援ロボットの源流はアメリカにあり、戦地の負傷者を遠く離れた場所から手術することを目的としていました。湾岸戦争の終結に伴い、戦場で活躍することはなかった技術ですが、別の理由で医療の現場に導入されることになります。実は、手術支援ロボットの操作は資格を持つパイロット(術者)が同じ手術室内で行いますので、遠隔操作ができる機能は重要ではありません。機械制御で自在に動くロボットアームが、手術操作に驚くべき自由度と繊細さをもたらしたのが最大の利点と言えます。手術を行う狭い空間で多彩な動きができるため、内視鏡下手術の利点をそのままに欠点を克服することにつながり、医療の質を向上させているのです。
呼吸器外科医として実際にパイロットを務めた経験からは、術後の回復は早く、痛みの程度は軽減されている印象を持っています。当然のことですが、個々の患者さんの状態に応じて最良の選択を行うことが大切ですので、すべての手術をロボット支援下で行うわけではありません。選択肢にロボット支援下手術が挙がるときには、主治医とよく相談してみるのが良いでしょう。
当院においても、今年の秋頃にはスタートする予定で準備が進んでいます。