ふれあい交流センター センター長
藤田 圭二(ふじたけいじ)
私は、車椅子生活をしながら外国と日本を行き来している方から、「日本は障害者のための法や設備が整っています。ハード面ではとてもいいと思うのですが、日本に帰ってくる度に、改めて自分が障害者であることを意識させられます」という話を聞いたことがあります。その方から直接、理由を聞いたわけではありませんが、私には感じるものがありました。日本では、どことなく特別扱いされているような感じがして、それが疎外感につながっているのではないでしょうか。障害がある方に対する無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が見え隠れしているように思います。
平成28年4月1日に、「障害者差別解消法」が施行され、さまざまな障害がある方への配慮がなされるようになってきています。この法律は、障害のある人もない人も、互いにその人らしさを認め合いながら、共に生きる社会をつくることを目指しています。正式名称は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」です。この法律では、国や自治体、会社やお店などに「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」を求めています。「不当な差別的取扱い」の禁止事項としては、学校の受験や入学を拒否したり、障害を理由に入店を拒否したりすることなどです。また、「合理的配慮の提供」としては、障害がある人の特性に応じて座席を決めたり、段差のある場合にスロープなどを使って補助したりすることなどを求めています。
障害がある方に「不当な差別的取扱い」を禁止することは当然ですが、障害のある方が、自ら「合理的配慮の提供」を申し出ることには、かなり抵抗感があるように思います。私たちは、自由であり平等であるはずです。立場の弱い方や少数派の方たちに優しい社会こそ、本当の意味において成熟した社会・国家だと思います。差別をなくすための法律ができることは重要なことですが、もっと大切なことは、国民一人一人がその法律の精神を自分事として捉え、実生活に生かすことだと思います。「障害者差別解消法」が「仏作って魂入れず」にならないようにしたいものです。そしていつの日か「障害も個性の一つ」と捉えられる日が来ることを願っています。