■小児糖尿病について知ってほしいこと
小児科医師
谷川 渉(たにかわ わたる)
糖尿病と聞くと〝中高年の不摂生(ふせっせい)による病気〟という印象を持たれる方が多いのではないでしょうか。今回は、最近問題となっている小児糖尿病についてご紹介します。
糖尿病とは、膵臓(すいぞう)から分泌される血糖値を調節するホルモン「インスリン」の働きが不十分なために血液中の糖を利用できなくなる病気です。自己免疫などが原因でインスリンの分泌ができずに発症する1型糖尿病と、肥満や運動不足によりインスリンの効果が減弱して発症する2型糖尿病に分かれます。小児では1型の患者さんが多いですが、近年、食の欧米化や運動量の低下に伴い、2型の患者さんが増加しています。特に最近では新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日常的な活動量が低下していることが問題になっています。米国では、コロナウイルス流行前と比較し、19歳以下の2型糖尿病の入院数が2倍に増加したという報告があり、今後は日本でも同様の現象が起きる可能性があります。
2型糖尿病は、発症予防が可能な疾患(しっかん)です。食事は1日の摂取カロリーを意識し、適正体重を維持することが重要です。ただし過剰な食事制限は成長の妨げとなるため注意しましょう。運動は有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて行うと効果的です。血縁者に糖尿病患者さんがいる場合は発症リスクが上昇するため注意しましょう。
糖尿病の初期症状は口渇(こうかつ)・多飲(たいん)・多尿(たにょう)など、自覚しにくく家族も気付きにくいものです。早期の治療により重症化を防ぐことができますので、気になる症状がある場合には、早めに医療機関へ相談されることをお勧めします。