■子宮頸けいがんワクチンについて~接種推奨再開とキャッチアップ接種~
第2医療部副部長兼産婦人科部長
周産期母子医療センター長
徳永 直樹(とくながなおき)
子宮頸がん(子宮の入り口部分でできるがん)は20〜40歳代の女性に多く、日本では毎年約1.1万人が発症、約2900人が亡くなっています。子宮頸がんは女性の多くが「一生に一度は感染する」と言われているHPV(ヒトパピローマウイルス)が原因で発症します。
HPVワクチンは子宮頸がんを起こしやすい2種類のHPVに対するワクチンで、16歳頃までの接種で子宮頸がんの50〜70%を防ぎ、前がん状態やがんを減少させます。日本では2010年に接種開始、2013年4月に小学校6年〜高校1年相当の女性を対象に定期接種(公費負担)となりました。しかしながら、広範囲の痛みや運動障害などの多様な症状が副反応疑いとして報告され、2013年6月に積極的な勧奨が控えられました。その後、日本のHPVワクチン接種率は激減し、2002年度以降生まれの女子で1%未満です。現在、このような多様な症状は「ワクチン接種との因果関係がある」とは証明されず、WHO(世界保健機関)も高い安全性と効果を示しています。
WHOや日本産科婦人科学会などは、ワクチンの接種推奨を強く求め続け、ついに2022年4月よりHPVワクチンの接種推奨(小6〜高1相当の女性)が再開されました。また、誕生日が平成9年度〜17年度生まれの女性の中でワクチン接種を逃した方のために、キャッチアップ接種を公費で行うことになりました。対象の方には案内が届きます。接種される際にはHPVワクチンの子宮頸がん予防効果とリスクを正しく知っていただいた上で受けてください。なお、接種を決めかねている場合には、母子手帳を確認持参し、市や医療機関に相談してください。