■顎(がく)関節症を知っていますか
歯科口腔外科 南部 和也(なんぶ かずや)
顎関節症とは、顎(あご)の関節やその周囲の筋肉の痛み、口を開け閉めするときの音、口が大きく開かなくなるなど顎の運動の異常を主訴(しゅそ)とするものです。
原因の中には歯並び、噛み合わせ、歯ぎしりや食いしばり、左右片方だけでの食事、頬づえなどの習慣的な癖、事故などの外傷、歌唱や楽器演奏による酷使、ストレス、スマートフォンやパソコンでの長時間に及ぶ作業などが挙げられます。
顎関節症と似た症状が腫瘍(しゅよう)などでも出ることがあり、診断するには鑑別が必要です。そのために症状の経過を問診、顎関節や周囲の筋肉の触診、下顎(かがく)運動や関節雑音の検査、レントゲン、CT、MRIによる画像検査などを行います。
治療は筋肉のマッサージ、温める、低周波電流による治療、開口訓練などの理学療法、鎮痛薬などによる薬物療法、マウスピースなど装置を使用するアプライアンス療法、手術を必要とする外科的療法があります。
コロナ禍で日常生活が変化しています。最近ではストレスや不安により歯ぎしりや食いしばりを行う人が増え、顎関節症と診断されたり症状が悪化したりする人が増えているとの論文も発表されています。
顎関節症にならないためにも1日に数回大きく口を開ける、適度に硬い食物を左右バランスよく咬(か)む、筋肉のマッサージ、十分な睡眠や運動など自己管理をして予防をすることが大事です。
多くの場合は一時的なもので自然に治りますが、気になる症状があるようでしたら歯科医院の受診、専門的な検査や治療が必要な場合は専門医のいる医療機関の紹介受診をお勧めします。
■バイオシミラー(バイオ後続品)をご存じですか?
薬剤部長 兼 臨床研究管理室長
正木 銀三
皆さんはバイオ医薬品をご存じでしょうか。遺伝子組み換え技術や細胞培養技術を用いて製造したタンパク質を有効成分とする医薬品です。これまで治療薬のなかった病気や、従来の医薬品では患者さんの満足度が不十分だった病気への効果が期待されています。糖尿病治療、がん治療、現在では乾癬(かんせん)や関節リウマチ治療にも使われています。
バイオ医薬品の特徴として、一般的な医薬品は化学合成により製造されますが、バイオ医薬品は細胞を用いて製造されます。口から飲むとすぐに分解してしまうので、現時点では飲み薬はなく、主に注射をして投与します。バイオ医薬品は効果が高く、副作用も少なく適用できる病気の利用範囲も広いというメリットがありますが、その製造が難しく薬の価格が高いという課題があります。
一般医薬品には先発医薬品の製造会社と別の会社でもまったく同じ主成分を作ることができる後発医薬品があります。バイオ医薬品にも国内ですでに医薬品として承認されている製品と同等の品質、安全性、有効性を示す医薬品としてバイオシミラー(バイオ後続品)があります。
しかし、バイオシミラーは後発医薬品のようにまったく同じ薬を作ることはできませんので、臨床試験、品質の試験などで、先行バイオ医薬品と同等の効果と安全性が証明された製品のみ販売することができます。また、発売後も、副作用の発現状況や効果を確認する調査が行われます。
バイオシミラーの活用は、患者さんの経済的負担の軽減のみならず、日本の医療費の抑制にもつながります。