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健幸 plus+『市立総合病院からのお知らせ』

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静岡県磐田市

■新型コロナウイルス感染症について
第1医療部長兼呼吸器内科部長
妹川 史朗(いもかわ しろう)

新型コロナウイルス感染症は、SARS‐CoV‐2(サーズコロナウイルスツー)の感染により、主に呼吸器系に炎症を起こす疾患です。感染者の約8割は軽症で、人工呼吸管理を必要とするような重篤(じゅうとく)な方は全体の6%程度ですが、重篤になると助かる可能性は半分程度です。
ここで注意が必要なのは、軽症、中等症の方の一部が、急速に重篤になり、死に至る場合があることです。肺炎が急速に進行して呼吸の状態が悪化していても「息が苦しい」と感じない方もいます。気が付かないうちに重篤になる可能性があるのです。また、ウイルスの変異により臨床像も変化します。変異株の一つのデルタ型では、若い方やこれまで言われてきた重症化の危険因子が無い方でも、急速に悪化する場合があります。

治療は呼吸のサポート(酸素投与、人工呼吸器装着、ECMO(エクモ)など)を行いながら、抗ウイルス剤(ウイルスの増殖を抑制する薬剤)とともに、ウイルスに対する過剰な免疫反応を抑える抗炎症剤(ステロイド剤や、関節リウマチの治療薬としても広く用いられているバリシチニブ)の投与を行います。
また、重症化リスクのある軽症患者さんや中等症の一部の患者さんへの抗体カクテル療法も有効な治療法です。しかし、最も重要なことは感染しないように心掛けることです。接種が進んでいるワクチンは、死亡や重症化、感染のリスクを減らす効果がありますが、それだけでは十分ではありません。見えない敵、新型コロナウイルスの感染から身を守るためには、ワクチン接種に加えて、マスクの着用、手洗い・手指消毒の徹底、三密(密閉・密集・密接)を避けることなど、日常生活の中で基本的な感染予防対策を徹底することが大切です。

■新型コロナウイルス感染症の経験を生かそう
~ピンチをチャンスに~
磐田市立総合病院 健診統括技監
井上 和康(かずやす)

日本国内でも新型コロナウイルスワクチンの2回目接種を終えた人が、全人口の50%を超えました。今後も新たな変異株の出現が予想され、新型コロナウイルス感染症の収束への道のりはまだまだ時間がかかりそうです。まずは推奨される基本的な感染対策を徹底することが重要となりますが、同時に「感染しても重症化させない方策」も考えることが大切です。

新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち重症化しやすいのは、高齢、肥満、喫煙などの要因や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患などの基礎疾患のある方です。実はこれはインフルエンザなど、他の多くの感染症にも共通するリスクです。誰しも加齢に関してあらがうことはできませんが、肥満や糖尿病などの生活習慣病の原因とされる「運動不足」や「食べ過ぎ」、さらに「喫煙」といった不健康な生活習慣は自分で良い方向に変えていけます。

一度は健康診断を受けた経験をお持ちのことと思いますが、健診結果を見るとき、いつもぼんやりと「再検査」の文字だけを眺めていませんか。結果の数値は、自身の生活習慣のバロメーターです。検査項目を一つずつ見るだけでなく、複合的に検査項目の結果をみて、リスクが重複しているか否かをチェックすることや、検査数値の経年変化を見ることが重要です。そうすることで、自身の健康状態を把握し、日常の体調管理につなげることが可能です。

皆さん、コロナ禍というピンチを、人生100年時代の健康寿命増進を考えるチャンスと捉えて、健康診断の受診と生活習慣の見直しをしてみませんか。

       

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